発酵デパートメント完成!展覧会から実店舗が生まれた話

発酵デパートメント誕生の経緯

47都道府県に足を運んで集めた発酵品がそろうお店、それが発酵デパートメント。前回の「展覧会から店舗が生まれた!発酵デザイナーが展覧会を開いた話」に続き、私たちのお店ができた経緯を紹介します。展覧会「Fermentation Tourism Nippon 〜発酵から再発見する日本の旅〜」(通称:発酵ツーリズム展)を開催したことをきっかけに、全国各地の醸造蔵から嬉しいニュースが届くように。

Fermentation Tourism Nippon 〜発酵から再発見する日本の旅〜
https://www.hikarie8.com/d47museum/2018/11/fermentation-tourism-nippon.shtml

廃業を考えていた蔵に未来が宿った

約3ヶ月で5万人動員を記録した展覧会。今までその地域の外にはほとんど知られていなかった発酵食品や蔵にスポットライトが当たり、全国的なヒット商品が生まれたり、後継者不在の厳しい状況にポジティブな変化が訪れたり。

例えば。小倉が訪ねた時には「跡継ぎもいないし、私の代で辞めちゃおうかな…」と還暦を過ぎた旦那さんがつぶやいていた、会津若松の麹屋さんの三五八漬けという商品がミュージアムショップで飛ぶように売れました。注文殺到で、なんと蔵仕事を手伝う人が現れたそう。

他にも。展覧会を取材したテレビ番組で小倉が紹介した佐賀の松浦漬けというローカル発酵食品が大ブレイク。松浦漬けがつくられる呼子は小倉の母方のルーツでもあり、展覧会がきっかけで呼子の街とのご縁も生まれました。

こうした反響は、会期中およそ50回も開催してきたイベントと、展覧会に併設したミュージアムショップが大きな要因です。スーパーで普通に売られているような味噌や醤油がほとんど見当たらず、全国各地の超ローカルな発酵珍味が勢揃いするミュージアムショップは、この展覧会のもう一つの顔でもあったんですね。

珍しい発酵品が飛ぶように売れる

このミュージアムショップ、前例のないラインナップにも関わらず信じられないほどの売上を記録しました。発酵食品ひとつひとつのストーリーを、実物はもちろん、写真や文章やレシピなど様々な角度で伝えたのが功を奏したのでしょう。各土地の発酵食品がどんな過程を経て現在まで継承され、なぜこの展覧会で紹介する必然性があるのか。その理由をきちんと伝えることで単なる物産展とは違う説得力が宿ったのではないでしょうか。

ギャラリー横の5坪のスペースに日本全国のローカル発酵文化の魅力をぎゅっと詰め込んだミュージアムショップ。小倉はこのショップに「発酵デパートメント」と名付けました。展覧併設の小さなショップが、のちに発酵デパートメントに発展していくことになるのです。

展覧会を実店舗に!

会期後半、予想以上のヒットを受け「この展覧会をお店にしないか?」というオファーが舞い込みます。事務局の小倉と黒江は当初「いやいやまさか」とそのオファー流していましたが、会期終了間近になるにつれ「一時的なイベントではなく、恒久的な店舗にしたほうがいいのでは…?」と思い直すように。

では実際にオープンするとしたらどんなことをすればいいのだろう?打ち上げ花火としてのイベント以上の価値を生み出すには?イベントで生まれたつながりを商品の売上につなげて、持続的な事業にすること。そのためには継続的に事業をまわしていくためのチームと資本が必要になるはず。

D&DEPARTMENTとしても初となる、展覧会からのスピンアウト事業。黒江と小倉にとっては未知の挑戦ですが、D&DEPARTMENTの仕事を注視し続けてきた小野にとっては、特定のテーマで47都道府県から展示品を集めるd47 MUSEUMの展覧会から、独立したお店や事業が生まれていくのは自然な流れでした。

事業化に向けて動き出す

お店立ち上げの具体的なアクションが始まったのは、2019年の夏頃。
小田急電鉄と、小野とブック・コーディネーターの内沼晋太郎さんが共同代表を務める散歩社が組んで、下北沢の線路跡地の再開発に取り組んでいた『BONUS TRACK』という商業施設。そこに発酵デパートメントを出店することに。

BONUS TRACK
https://bonus-track.net/

もしこの場所に出店したら、展覧会に登場した醸造家たちが、東京出張に来るたびに気軽に立ち寄ってくれる、発酵醸造に関わる人たちのホームのような場所になり得るのではないか。そして醸造家と発酵好きが集まるその店は、発酵カルチャーの中心地になるのではないか?発酵ツーリズム展で生まれたご縁を、一時的なものから継続的なものに変えていく。そした長い視点で醸造家たちをサポートし、発酵文化を継承していくような事業にしていきたい!

そんな未来へのイメージを描いて、展覧会終了から休む間もなく事業の立ち上げが始まりました。
立ち上げにあたって小倉はこんな構想を持っていたようです。

お店の営業中に醸造家が訪ねてくれて、スタッフが醸造家から商品のことをあれこれ学ぶことができる。製造プロセスやものづくりの工夫、その土地の歴史背景を知ったうえで商品を取り扱う。背景を深く知った上でお客さんに伝える。そんなお店になったら、お店を訪れる人にも「ここに来れば単なる買い物ではなく、気づきや学びを体験できる」と思ってもらえる。安売りやセールのような「お得さ」に頼らずに、お客さんも納得して、商品の製造側も販売側も損をしない。そんな健全な店が作れるはず。

まずは法人立ち上げから

黒江にとって展覧会から実店舗を作る初めてのプロジェクト。まず着手するのは法人の立ち上げです。

d47 MUSEUMの展覧会は、D&DEPARTMENTと小倉の共催。その関係性をベースに法人をつくるのが理にかなっているはず。展覧会事務局担当の黒江は、小倉や小野を伴ってD&DEPARTMENTの経営チームに相談を法人立ち上げの相談をしにいきました。D&DEPARTMENTに一部出資してもらう形で、小倉、黒江、小野を経営チームとする法人をつくることに話がまとまっていきました。

【プレスリリース】Fermentation Design Lab.設立のお知らせ
https://hirakuogura.com/?p=13391

この時、D&DEPARTMENTの一事業部ではなく、独立した法人にした理由を小野はこう語ります。

「D&DEPARTMENTの文化を尊重しつつ、発酵文化に人一倍の情熱を持つ小倉の推進力を生かしたい。だから小倉に裁量権を持たせる。法人登記をする際の持株比率は小倉が4割、残りの6割を小野と黒江とD&DEPARTMENTで割るようにして、小倉が拒否権を持つ組織にする。そうすれば、小倉が最終的な決断を担う前提で、みんながしたいと思うことを提案していきやすい、フェアな組織ができると思うんだよね」

小倉にとっても、会社は公器。個人から出発したとしても、最終的には組織として社会的意義を果たすものでならない、という想いがあり、個人と公が両立する組織の建て付けをつくる必要がありました。

初年度からけっこうな規模の事業に

店舗を開業するだけなら個人事業でも事足りる。けれどもBONUS TRACKに開業する店舗は約35坪の広さ。そして展覧会の時に扱った膨大な数の商品を仕入れて売るには、組織だった物流と在庫管理の仕組みが必要です。さらに小売だけでなく飲食スペースも併設するので、キッチンをまわすチームも必要。微生物を扱う以上、衛生管理もしっかりしないといけない。初年度からそれなりの規模になるであろう事業をやっていくためには「法人格の取得」が不可欠でした。

発酵デパートメントを運営する会社
https://hakko.design

実はBONUS TRACKから店舗の開業を持ちかけられた当初は、5坪の小さな敷地のはずでした。それが契約間近に6〜7倍ある大きな敷地へのオファーが持ちかけられ、したがって事業規模も格段に大きくなる予想外の展開。そのために2019年の秋頃から資金調達に力を入れることに。初年度から年間約1億円の売上を立てなければいけない事業に向けて、小野と小倉が中心となって資本金集めや銀行の借り入れに走り回ることに。

次回予告

資金調達や店舗の設計、商品の仕入れや求人など数え切れないプロセスを経て、2020年4月1日に発酵デパートメントは開業しました。展覧会から生まれた企画らしく、小売スペースにはミュージアム機能を備えるお店です。そこに飲食スペースが併設され、醸造家による角打ちイベントや、味噌や納豆などのDIYワークショップも開催。

オープンから数ヶ月のコロナ禍では、店舗運営にも工夫をしました。毎月ユニークな発酵調味料や発酵食材を定額で届ける「発酵調味料のサブスクリプションサービス」をスタートしたり、オンラインでDIY講座を開いたりするなどの取り組みに力を入れました。

発酵サブスク
https://hakko-department.com/wp/product/373/

発酵デパートメントを運営する「発酵デザインラボ株式会社」は、小倉、黒江、小野の3人が中心になって運営されています。店舗運営を中心に、立ち上げ以前から小倉が請け負ってきた発酵や微生物に関わる商品・サービス開発や、行政との観光プログラム開発なども手掛けています。2020年夏現在、福井や愛知などでの展覧会の企画や、食品メーカーや地方自治体との開発事業も進行中です。

小倉が発酵文化とのつながりを育み、小野が継続できる事業体としての形を整え、黒江が事業を担うチームをつくる。異なる能力が重なり合って生まれる事業のつくりかたは、また次の機会に紹介したいと思います。

次回「発酵デパートメントのつくりかた。小倉ヒラクの場合」

発酵デパートメントについて

住所

東京都世田谷区代田2-36-15 BONUS TRACK内
※下北沢南西口から世田谷代田駅方面に徒歩3〜4分

営業時間

物販エリア
【平日】12:00-19:00
【土日】11:00-19:00
飲食エリア
【平日】12:00-22:00(17:00から予約制ディナーと角打ち営業)
【火曜】予約制ディナーはお休み

定休日

水曜日

運営

発酵デザインラボ株式会社
https://hakko.design/

お問い合わせはこちらからお願いします。
https://hakko.design/contact/

この記事を書いた人 発酵デパートメント

発酵デパートメントのオフィシャルアカウント。

発酵MAGAZINEHAKKO MAGAZINE

発酵チャンネルHAKKO CHANNEL