「できる人によるできる人のためのレシピからの脱却」発酵MAGAZINE インタビュー vol.1 山口祐加 第3回

2020年4月1日にオープンした発酵デパートメント。コロナ禍を駆け抜けたこのお店を支えたのが、「発酵サブスク」の存在でした。その中で大きな力となったのが、自炊料理家山口祐加さんの「発酵自炊レシピ」。

「どう使っていいか、わからない!」となってしまいそうな、ひと癖もふた癖もある発酵デパートメントの商品たちを、山口さんならではのお手軽レシピで紹介するもの。

そんな「発酵サブスク」の誕生秘話と自炊料理家・山口祐加さんのお話を全4回の連載で振り返っていきます。第3回は山口さんが「料理ができない人」のために開発した「自炊レッスン」や「週3レシピ」について伺いました。

第1回はこちら、第2回はこちら

自炊レッスンはスーパーで食材を買うところから

ヒラク:自炊レッスンではどんな風に教えてるの?

山口:まずスーパーで買い出しするところから始めるんです。だから、食材を選ぶときのポイントとかも教えます。本当は食材ごとに細々と見るべきポイントはあるんですけど、基本的には鮮度が一番大事なので、見た目が「元気なもの」「きれいなもの」を選んでくださいって言います。

ヒラク:なるほどね。

山口:たとえば金魚を飼おうと思ってペットショップに行ったら、元気に泳いでる金魚を選びますよね、そういうイメージですって(笑)。

ヒラク:活きのいいやつね(笑)そもそもさ「料理教室」って普通は料理をやる気がある人が来るものだけど、自炊レッスンの場合は、ある意味やる気がない人向けってことだもんね。それって革命的。

山口:そうなんですよ。レシピ本もそうなんですけど「料理ができる人によるできる人のためのレシピ」ってたくさんあるんですけど、「料理ができない人のためのレシピ」ってなかなかなくて。しかも、料理が苦手な人って「レシピに書いてある通りに作らなきゃ」って思っちゃうんですよね。

一人暮らしにとっての「ワイン50ml」のハードルの高さ

ヒラク:それでいうと、サブスクのトリイソースを使ったハヤシライスのレシピは良かったよね。トリイソースとバターだけ、トマトも使ってない。

山口:ワインも使ってないですね。普通、デミグラスソースのレシピって「ワイン50ml」とか書いてあるんですよ。でも、一人暮らしの家にワイン50mlなんてなかなかない。

ヒラク:料理する人とかワイン飲む人とかじゃないとね(笑)ちなみに、このハヤシライスは発酵デパートメントの中でも話題になって、美味しすぎるということで、そのままランチメニューになりましたからね(笑)。

料理のネガティブ要素を先回りして解決した「週3レシピ」

ヒラク:ユカちゃんのレシピ本「週3レシピ」は発酵デパートメントでも大人気ですよ。

山口:ありがとうございます。

ヒラク:もともとnoteでの連載がきっかけだったんだよね?

山口:そうなんです、noteでディレクターをしている平野くんと友達と3人で飲み会をしてたときに、私以外の2人が「料理ってめんどくさいよね〜!」って話で盛り上がってたんです。

ヒラク:平野くんね。ぼくもよく知ってるけど、わりとものぐさな20代男子(笑)。

山口:その盛り上がったノリで「え、じゃあ私教えようか?」って言ったのが始まりでした。私にとっても、料理が苦手な人がなんで苦手かって、まだわかってなかったので。

ヒラク:なるほど。

山口:聞いてみると「レシピ見て、食材を買って、料理するところまではいいけど、残った食材をどうしていいかわからない」「余った食材をテトリスみたいに組み合わせて使い切るのが無理」って言ってたんです。私なら、お味噌汁に全部入れればいいじゃん、って思うんですけど(笑)。でも、料理苦手な人は、結局余った食材がダメになっちゃって、それで料理をしなくなるんだってことがわかったんです。

ヒラク:たしかに、食材を捨てるって罪悪感もあるからね。

山口:だから「食材が余らないレシピ」を先に作って、それの通りに週3回だけ自炊すれば、買った食材を全部使い切れるっていう形式にしたんです。

ヒラク:料理のネガティブ要素を全部先回りして解決したんだ(笑)女性誌によくある「5着でいけちゃう!1週間着回しコーデ」みたいなことだ。

山口:はい(笑)そしたら、平野くんも「これなら食材が使い切れて気持ちいい」って言ってくれて。


話題に出てきたnoteディレクター平野さんの自炊記事はこちら

熟練の料理家さんが作る「シンプルで手軽なレシピ」の説得力

ヒラク:料理だけじゃなくて、「料理をするための心づもり」も教えるんだね。料理が苦手な人のためのコーチングというか。

山口:そうですね、レシピ単体を教えるというよりは、教えたレシピたちをどうぐるぐる回していくか、まで伝えるイメージです。たとえば、この食材にはちょっと塩とオイルを和えるだけで美味しいんだよ、とかも教えます。

ヒラク:土井善晴さんの「一汁一菜」みたいな。

山口:まさにそうです。熟練の料理家さんになると、そういうシンプルで手軽なレシピも発信していらっしゃるんですけど、逆に料理初心者の人はそういうコンテンツにアクセスできないじゃないですか。

ヒラク:たしかに。

山口:私も「一汁一菜で良い」みたいなレシピ本を出したかったんですけど、これって手間ひまかかる料理もたくさん作ってきた土井さんだからこその説得力だなと思って。

ヒラク:何周もして極めた人が語る説得力ね(笑)。

山口:だから、私は「食材を使い切る」っていうテーマのレシピ本にしたんですよね

(第4回につづく)

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