完売御礼。麹の元気玉みたいなクラフトビール「COZY ALE」は一体なんだったのか。

投稿者 :HakkoStaff on

うららかな春の日。「元気玉みたいなビール作っているんだよねぇ」と発酵デパートメント・オーナーの小倉ヒラクが、ニヤニヤしていたのを覚えています。その数週間後に彼は「絶賛、麹が爆発中らしいんだよね」と言い、その数週間後に「COZY ALE」が発売されました。瞬く間に売り切れ、まるで春の嵐のよう。アイツは一体なんだったのか。「COZY ALE」の醸造を手がけた、FARCRY BREWINGのヘッドブルワー阿久澤 健志(あくざわ たけし)さんと小倉ヒラクの乾杯配信を振り返ります。

▼なお、動画全編はアーカイブ配信中です▼

 

阿久澤 健志(あくざわ たけし)さん
2021年1月に群馬県桐生市で誕生したブルワリー「FARCRY BREWING」のヘッドブルワー。麹を使ったクラフトビールの生みの親ともいえる人物で、「伝統的な文化をリスペクトしながらも、アバンギャルドで新しいことに挑戦していく」(小倉ヒラク談)。Kozy is in you.

小倉ヒラク
発酵デザイナー。下北沢『発酵デパートメント』オーナー。YBSラジオ『発酵兄妹のCOZY TALK』パーソナリティ。著書『手前みそのうた』(農山漁村文化協会、2014)、『発酵文化人類学』(角川文庫、2020)『日本発酵紀行』(D&DEPARTMENT PROJECT、2019)など。写真集に『発酵する日本』(Aoyama Book Cultivation、2020)。山梨県の山の中で日々菌を育てながら暮らしている。

味噌蔵、酒蔵、パン屋まで。元気爆発の「COZY ALE」

小倉ヒラク(以下、ヒラク):「COZY ALE」は味噌蔵や酒蔵などから分けてもらった、12の麹が入ったクラフトビール。実は解説を含めて色んなコンテンツを予定していたのだけど、発信する暇もなく即完売だったので、今回は償いもこめての配信です!

阿久澤 健志(以下、阿久澤):僕も今手元になくて、違うビールを飲んでいる。

ヒラク:だよね。関係者の手元にも残らないという。


▲ひとまず、カンパ〜イ!小倉ヒラクの横にいるのは、FARCRY BREWINGでも使われてる吹きガラスのビールグラスを作った、こまきガラスの小牧さん

ヒラク:この企画は世の中はずっとコロナでしょんぼりしているし、なんかやろうってはじまったんだよね。阿久澤さんがヘッドブルワーとして、FARCRY BREWINGを立ち上がったのもあって、繋がりのある蔵の麹を集めてビールを作ったら面白いんじゃない?って。麹を集めるよりも、元気を集めるという表現が近いかな。

阿久澤:以前から僕が麹を使ったクラフトビールを作っていて、その技術を存分に活かした企画を、と。

ヒラク:初めてのチャレンジだから、きちんと商品に仕上がるか不安だったけど、杞憂だったね。テクニカルな面も含めて、さすが。

ABV: 8.0% / IBU: 20
原材料名: 麦芽(ドイツ産), 麦麹(国産麦)、黄麹(国産米)、白麹(国産米)、黒麹(国産米)、パン、味噌、醤油
容量: 330ml(瓶)
使用麦芽: IREKS Ale Malt, IREKS Wheat Malt, IREKS Sour, IREKS Crystalmaple, IREKS Aromamalt, Crisp Oatmalt
使用ホップ:NZ Waimea, US Mosaic, US Nelson Sauvin, GR Mandarina Bavaria, GR Ariana
製造元:FARCRY BREWING

▲もはや原材料名だけでは何のドリンクかわからない。クラフトビールのスタイルも定めておらず、アルコール度数は高め。

ヒラク:見ての通り、本当に色んな麹が入っているんだよね。

阿久澤:まず米麹と麦麹が両方入ってる。さらに米麹の中でも日本酒やお味噌に使われる黄麹、焼酎で使われる白麹、黒麹とあって。

ヒラク:麹ってひとことで言っても色々ありまして。それぞれに個性があるんだよね。

▲Twitter上ではこんなやりとりも。

【参加企業とビールに入れた原材料まとめ】

ヒラク:ビールを作り始める前に、麹を甘酒にして味見したんだっけ。

阿久澤:そうそう。甘酒にした味わいを解説すると、一般的には黄麹がみなさんのイメージする甘酒に近くて、白麹は酸味があってフレッシュ。黒麹は甘酸っぱくて、クエン酸の酸味が際立つ味わい、って感じなんだけど。なんだかんだ皆さん個性的な麹が多くて、すごかった。
寺田本家さんの玄米麹はパワフルでスパイシーだったし、wakazeさんのフランスのお米を使った麹は甘めで上品なお菓子みたいな味わいで。

ヒラク:澤田酒造の麹は、火災被害で麹室が焼けてしまって、そのときに残った貴重な麹なんだよね。

勘でまとめあげた変態性たっぷりのレシピ

ヒラク:麹はどの段階で入れたの?

阿久澤:全部で4回に分けて入れたよ。粉砕した麦芽を水と混ぜるときに一緒に麹を入れるでしょ。それを甘〜い麦茶にする糖化のステップで最初に甘酒と麹を入れて、仕上げにも麹を入れて。

ヒラク:バンバン入れるね。それは全部まとめて?

阿久澤:全部一緒にして入れたね。糖化が終わると、酵母を加えて本発酵プロセスに写る。酵母はベルギー系のフルーティな香りを出すものとニュートラルなものの2種類を混ぜていて、発酵の仕上げの段階でも麹を入れてて。

ヒラク:え??また入れたの??

阿久澤:日本酒の段仕込みのイメージなんだよね。ビールって本発酵の段階で酵母がある程度糖分を食べたあと、食べきれなかった糖分が残るんだけど、麹を入れるとその糖分が酵素で分解されるのね。日本酒を仕込むときに使われる、並行複発酵というんだけど。

ヒラク:え、さらっと言ってるけど、変態すぎるよ。本来、ビールで並行複発酵する必要ないからね。クラフトビールと日本酒の製造工程をミックスした感じ??

阿久澤:日本の発酵技術へのリスペクトだね。あと、ブリュットIPAっていうスタイルのビールで、本発酵のときに途中で酵素剤を加えて、発酵を切らせる製法があって、それを麹で応用した感じかな。

ヒラク:副原料のルーブルのパンと味噌と醤油はどの段階でいれたの?

阿久澤:パンは麦芽を混ぜるときにちぎって入れたでしょ。五味醤油のやまご味噌とみつる醤油の醤油は水質調整をする糖化の段階と煮沸の段階に分けて。前に味噌入れたビールを作ったことがあるんだけど、酵母が元気になるんだよね。

ヒラク:今回は麹と酵母で発酵が大爆発していたんだよね。

阿久澤:おかげさまで。アルコール度数も最初は6%前後を予定していたんだけど、最終的に8%に着地したね。アルコール濃度や味の調整のために加水しようとして、これはそのままが美味しいんじゃないか?って、やめたんだよ。
クラフトビールって色々と原料や製造方法によって、色んなビアスタイルに分類されるんだけど、今回はこれっていうのはなくて。強いていうなら、高アルコールで旨み濃厚なバーレーワインやトリペルに近いかな。

ヒラク:当初って、仕上がりのイメージはどれくらいあったの?

阿久澤:あまり完成像や出来上がりの予想をしないで作ったんだよね。集まってもらってる中でなんかの味を目指して作るってのは違うというか。みんなの個性に任せて、いいところになってきたら着地点をつけようって思ってたの。遊ばせたほうがみんなの良さが出るかなって。

ヒラク:どの段階で着地点が見えたの?

阿久澤:本発酵の中期から終わりの段階かな。その辺りで仕上げにラガー酵母入れて。

阿久澤さんの腕前で「cozy=心地の良い・親しみやすい」味わいに

阿久澤:味のバランスとしては、フレーバーはリッチなのがいいなぁと思っていたんだけど、余韻が重すぎて1杯で満足するようなビールにはしたくなかったんだよね。最後のキレと、温度高くなっても美味しいようには意識はしていたね。

ヒラク:重くてドライなのができるかと思ったら、甘くて余韻も長くて、優しい口当たり。本当にドリンカブルに仕上がったよね。びっくりした。正直、製法聞いてもわかんないよ。本当にどうやって作ったの?って感じ。和の調味料感とかもあるけど、わざとかな。

阿久澤:ん〜、成るように成るで作った感じだから、マジで感覚なんだよ。でも、発酵コントロールと酵母の種類でバランスをとったりはしたけどね。あとは発酵と熟成の管理が大事かなぁ。このビールって、本来は3月にリリースするはずだったのに4月中旬まで発売を延ばしたでしょ。発酵したあとの熟成が足りてなかったので、とにかく辛抱して熟成させたんだよ。

ヒラク:なるほどね。いや〜、これを感覚で仕上げちゃうのヤバイ。

「COZY ALE」第2弾は、パワーアップして参上?

ヒラク:これは来年もやらなくちゃね。きっと全然違う味になりそうだね。

阿久澤:再現性は考えずに、一期一会な味を作りたい!

ヒラク:今回リリースしたビールはボトルに入れる前にも飲ませてもらったんだけど、それはそれで味わいと香りが良かったから、次回は生樽も出したいなぁ

阿久澤:ボトルの中で発熟成させるボトルコンディショニングをやるのも面白そうだね。

ヒラク:もう、みんな生半可な麹を送ってこれないよ。こりゃ、麹の天下一武道会だわ

阿久澤:次はしっかり麹を作った皆さんと顔を合わせて、ヒアリングしてから取り組みたいな。


「COZY ALE」のプロジェクトは始まったばかり。第2弾への期待を募らせながら、次回も予約争奪戦が起きるやも、と武者震いする一同でした。


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