【小倉ヒラクの発酵沼へようこそ!】第5回:表現こそ日常に不可欠なもの

発酵デパートメントの名物の一つ、青山ブックセンターと一緒に運営している巨大本棚。
発酵や食にとどまらず、生物学や人類学、アート・デザインなど発酵の周辺にある様々なトピックスの本が並ぶ、ファンの多い売り場です。

でね。
この本棚、青山ブックセンターに集うコミュニティがメンテナンスしているんですね。普段本屋さんを本業とはしていないんだけど、書店員や小売の仕事を体験してみたい人が集う本好きのコミュニティです。

2週間に一度来て、売り場づくりをしているのは、青山ブックセンター発酵デパートメント支店(←ややこしい)担当、IT系会社勤務のマナミさん。最初は恐る恐る棚をいじっていたんですが、

「思い切って自分の好きな本をドーン!と推すPOP描いてみなよ」

と背中を押してみたら、しばし悩んだ後、「自分の好きな本コーナー」を作り出してくれるようになりました。

この「好きなもの、必要だと思うものを自分の言葉で伝える」という行為を、表現といいます。

表現が人と場所を動かす

↑最初に書かれたPOPは、森田真生さん『数学の贈り物』↑

「表現」と聞くと、歌ったり絵を描いたりと、何か特別なゲイジュツをやることだと思ってしまう人もいるかもしれません。でもほんとは誰しもに開かれた、もっともっと身近なものなのです。

気になる人がいて、どうやってデートに誘おうか?
自分のお気に入りの本を、大事な人にも読んでほしい!
仕事で達成したいことがあるんだけど、どうしても一人では越えられない障害がある。

こんな時に必要なのが「表現」なのですね。

こんどの花火大会、あなたと一緒に見に行きたいな!とか、
この本には、あなたの悩みの答えが書いてあるよ!とか、
普段の業務外かもしれないけど、  手伝ってくれたらスゴい結果出るから!とか。

気持ちを届けたい誰かのことを一生懸命考えて、その人が欲するであろうメッセージを真剣に伝える。お願いする。そしてその誰かの心が動く。心が動いて、行動になる

ほら、これって音楽や絵を描いて人の心が動くのと、根本的には同じ。表現なんです。

マナミさんが自分の推したい本にPOPをつける。これは表現の輝かしい第一歩。

表現こそ日常の仕事や人間関係を動かす

ルールで決まっているので、こうしてください。
お得で便利なので、こうしてください。

こういう、特定の誰かを想定していない言葉でも物事は動くといえば動く。
けれども、例えば本屋さんや発酵デパートメントのような食材店では、売り場をつくるときに必ず現場の人の「表現」が必要になります。

もっと考えてみれば。小売でない仕事だって、特別な成果を出す時や苦境にある時、ここぞという時に「表現」が必要になります。

さらにいえば恋愛だって。
生まれつきとんでもない美男美女かつ高貴なお家柄で、何もしなくても求愛する人が列をなして困る…という特殊なケースでないかぎり、どこかでえいや!とジャンプして「表現」が必要になるものです(えっ?必要ないって?それは失礼しました)。

好きなものを人に押し付けるなんて、おこがましくない?
自分の言葉を真剣に伝えるのって、恥ずかしくない?

と怖気づく気持ちもわかる!
…けれど、最初はへたっぴでも「表現」することから物事が動いていくことがたくさんあります。ルーティンの枠からはみ出てしまう変化や挑戦、絶体絶命に見えるピンチを打開するのは、個人の言葉とえいや!の度胸。

いつか準備が整ったら…と思っていても「準備万端」の状態なんて勝手にはやってこない。
まずどんな不器用でも「表現」してみることからしか始まらない。

なぜならば。
ビギナーの表現って、その時にしか醸し出されない特別なオーラがあるんです。
その初々しさは、伝わる人には伝わる。そしてリアクションになって返ってくる。

そこから表現を重ねるうちに、ビギナーオーラから中級者オーラ、上級者オーラへと進化していく。
身の回りの人のみに届いていたメッセージが、もっと広い範囲に届くようになっていく。

そのポジティブスパイラルに突入するために、

①表現するテーマや場所 ②背中を押してくれる友達や同僚 ③足を踏み出す勇気

の3つが必要です。
今回のマナミさんの場合は、本というテーマと発酵デパートメントという場があり、青山ブックセンターコミュニティや僕のような存在に促されて、えいや!と新たな表現を始めたのでした。めでたい!

どうぞ本棚を見に来てください。

…ということで。
青山ブックセンターと発酵デパートメントで選書した巨大本棚。
2週間に一度、愉快なラインナップが入荷されています。見る人が見たらかなりハードコアなセレクトで、発酵食品そっちのけで本を爆買いする人もちらほら。

ちなみにオンラインストアでも、僕の著書が買えるようになっています。
(手前みそですいません)

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