麹ってなんだ? - 小倉ヒラクの発酵道場 第2回 -

YouTubeで大好評のコンテンツ、発酵デザイナー・小倉ヒラクが「発酵」にまつわる疑問・質問に答えていく新コーナー「発酵道場」が記事になりました。

第1回は「発酵ってなんだ?」でしたが、続いては日本の発酵食品の特徴である「麹/糀/こうじ」について。なんとなく「塩麹」とかで名前は聞いたことあるけれど、麹が何なのか知らない人も多いのでは。今回もわかりやすく解説していきます!

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みなさん、発酵してますか?発酵デパートメントの小倉ヒラクです。

発酵のアレコレを楽しく学べる発酵道場、第一回はいかがでしたでしょうか?前回はそもそも発酵とはなんぞや、という話でしたが、今回は「麹」について話していきたいと思います。

みなさん「麹」っていう名前は聞いたことあると思います。
最近、甘酒とか塩麹とか人気があるので、それをきっかけになんとなく知っているという方・食べたことがあるという方はいらっしゃるかもしれませんね。

その元になる麹がなにかご存知ですか?とあらためて聞かれると、意外と知らない人が多いように思います。

今回は麹の定義をお伝えするので、ぜひバッチリ覚えてください!

麹とはなにか?

麹とは、「穀物にコウジカビがモコモコ生えたもの」です。
分かりましたか?…わからないですよね笑。

麹には「米麹」や「麦麹」などの種類があるのですが、どれも元になっているのは穀物です。
みなさん、森や山へハイキングなどに行った時、落ちている木の実にカビがモコモコ生えて毛玉みたいになってるいるのを見たことがあるでしょうか。

実は、麹も同じ。穀物にカビが繁殖してモコモコになってる状態のことを麹っていうんですね。
ただ、カビって言てしまうと毒とかバイキンのイメージがあるかもしれません。でも、麹を作るカビはすごく特殊なカビで、毒がない。人間に有用な成分を作ってくれる、特殊なカビなんです。それが「ニホンコウジカビ」あるいは「麹菌」と呼ばれるものです。

麹菌によって穀物がモコモコすると、麹になるということを覚えて欲しいです。

ちなみにこの麹菌は発酵デパートメントなどでも売っています

どんなものかというと…、パッと見、白くてやばそうな粉です。カビの種そのものです。
皆さんのご自宅でも、お米を蒸して、そこにこの白いパウダーを振りかければ、カビが繁殖してモコモコして、麹を自分で手作りできます。発酵デパートメントでは時々こうじづくりのワークショップもしているので、ぜひチェックしてください。

まとめますと、穀物にカビが生えてモコモコしたもの、イコール麹です。ここまではOKでしょうか?

麹ってどんな味?

麹自体は別に美味しくないんですよ。
ポリポリ食べても(僕はたまにポリポリ食べてるんですけど)別に美味しくはないんですね。

麹はあくまでも発酵のスターターなので、こいつをベースにして何かしら加工しないと、甘酒や塩麹のような美味しい発酵食品にはなりません。

例えば、この麹を水に入れて50〜60度でしばらく温めてていくと、甘酒になります。おかゆみたいな状態になるんですが、スターターである麹が、お米を分解して甘みを作り出して、美味しい甘酒になるっていう作用をしている。

え、いやいや、なんで?ってなりますね。

ここで、僕が作ったアニメを紹介します。
それでは聞いてください、こうじのうた。

「分解チョキチョキ うまみ増す あまみ増す」という歌詞がありましたね。

麹についているコウジカビはハサミを持っています
このハサミで、お米の中にあるデンプンをチョキチョキ分解すると甘みが出る。
タンパク質をチョキチョキ分解すると、旨味が生まれる。
というのが、麹に含まれるハサミ、つまり「酵素」の働きなんです。

この2種類の「酵素」のどちらを働かせるかによって、甘みの方を振り切ると甘酒になり、旨味の方を振り切ると塩麹とか味噌みたいになります。
スイーツにもなるし、調味料にもなるという、すごい優れものなのです。

酵素のデザインをしている

もうちょっと構造的に説明してみましょう。

日本人が麹を使って何をしてきたかと言うと、酵素のデザインをしてきたんです
「旨味を作る酵素」「甘みを作る酵素」など、いくつかの酵素が麹の中にあるんですけど、どちらの酵素をより働かせるかは温度や環境でコントロールできます。

たとえば、味噌や塩麹を作りたいなら、旨味を作る酵素だけを働かせてあげる。甘酒が飲みたいなら、旨味は押さえ気味で、甘みを引き出してあげる。

さらに応用すると、甘酒を放っておくと、酵母っていう別の菌が働くことで、甘味がアルコールに変わり、お酒ができます。いわゆる、どぶろくです。

このように、日本人は甘味や旨味の割合を変えるために、酵素のデザインをしながら発酵食品を作り上げてきたわけなんです。

だからこうじって本当にすごくて。発酵食品いろいろありますが、甘酒、塩麹、味噌、お酒、お酢、みりんなんかもそうですね。麹をつかった漬物もあります。
日本の基本調味料の多くが、この麹からできている。

なぜそれができるかというと、このコウジカビってやつがいろんな酵素を持っていて、その中から自分の使いたいやつだけをピックアップして甘味とか旨味を強めることができるから、ということです。

麹にはいろんな種類がある

実は麹にはバリエーションがあります。
その中で一番変わっていて、今もっとも発酵デパートメントで人気のやつをせっかくなので紹介します。

 

黒麹です。その名の通り黒い麹です。

これはもともと白いお米だったんですけど、カビの色が真っ黒なので、見た目が河原の小石みたいになっちゃってるんですけど…。

黒麹のカビは、沖縄とかに住んでるカビなんですね
南に住むと菌の色も日焼けで黒くなるみたいで面白いんですけど、この黒いカビをお米にモコモコはやして、それを甘酒状にしてさらにお酒状にしてどぶろく状にして、それを蒸留したものが泡盛なんです。

だからこの黒麹は、もともと泡盛のもろみを作るものだったんですが、最近発酵クラスタの間で話題になってるのがこの黒麹でつくった甘酒です。

この黒コウジカビっていうのは分解チョキチョキによって、クエン酸を作るんですね。

暑くて多湿なところって、発酵するときに敵(他の微生物)がいっぱいいるので、敵をやっつけるために強い酸を作るんです。
それがクエン酸なわけですが、この黒麹で甘酒作ると見た目は黒いおかゆみたいな感じなんですけど、飲むとパイナップルジュースみたいな味がします。

黒くて甘酸っぱくて脳がバグる味になりますが、これもカビの作用なんですね。

ほかにも、白いカビ、緑のカビ、赤いカビとかがあるんですけど、それぞれ風味が違います。それらを利用して、使い分けて、いろんな発酵文化を作ってきたというのが、日本および東アジアの麹事情です。

麹の文化は奥深い!

本当に麹は奥が深いんですよ。今回は日本の麹だけ紹介したんですけど。中国とかインドネシアとかインドとかにも麹みたいな発酵ブツがあって、それによって文化が分かれています。

そういう事情はボクの著書『発酵文化人類学』にも、その一端が書いてあります。興味がある方はぜひ読んでみてください。

ということでおさらいです。麹とは穀物にコウジカビつけてモコモコさせたやつ。

この麹菌を使うことによって日本人は酵素をデザイン・コントロールしながら、甘酒とか塩麹とかお味噌とか、さまざまな発酵食品を生み出してきた。

麹にはいろいろ種類があって、酸を出す黒い麹とか、緑色の日本酒を作る麹とかがある、ということでした。

 

いかがでしたでしょうか?
次回は「乳酸菌」について解説します。お楽しみに!

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