関東一の日本酒県!? 小倉ヒラクの茨城県央発酵旅【前編】

「茨城県の発酵食といえば?」とたずねると、10人中10人が「納豆!」と元気よく答えるはず。でも、それって本当なのでしょうか。本当だとしたら、なぜ納豆づくりが盛んになったのでしょう?

小倉ヒラクが県央エリアの発酵スポットを巡り、茨城県の発酵を解説!
前編は日本酒、後編は納豆をテーマにお届けします。

後編:茨城=納豆はいつから? 小倉ヒラクの茨城県央発酵旅【後編】

茨城県は発酵している?
今回巡るのは県央エリア

茨城県は利根川・那珂川・久慈川をはじめとする河川が流れ、関東平野が広がり、親潮と黒潮が交差する海がある、農業と漁業が盛んな地域です。名産品は、あんこう、ほしいも、メロン、レンコンなど、恵まれた土地から生まれるものもたくさんあります。

県は大きく分けて、県北、県央、県南、県西、鹿行の5エリア。
今回訪ねるのは、水戸市、笠間市、ひたちなか市、那珂市、小美玉市、茨城町、大洗町、城里町、東海村の9つの市町村からなる「県央エリア」です。

いばらき県央地域観光協議会の方とお話しする中で、私たちが選んだおすすめの発酵スポットは以下の通り。

<県央のおすすめ発酵スポット>

水戸市‥‥‥笹沼五郎商店★
笠間市‥‥‥磯蔵酒造★
ひたちなか市‥‥‥黒澤醬油★
那珂市‥‥‥木内酒造★
小美玉市‥‥‥タカノフーズ水戸本社工場★
茨城町‥‥‥丁烹喜多蜂★
大洗町‥‥‥月の井酒造店★
城里町‥‥‥髙安園★
東海村‥‥‥鈴木ハーブ研究所★
※一般見学ができないスポットもございます。見学希望の場合は事前に各スポットにお問い合わせください。
※★のスポットは、店頭販売あり。

▼▼各市町村の見どころ(外部サイトに遷移)▼▼
https://www.city.mito.lg.jp/site/kenou-area-guide/57894.html

関東一の日本酒県、まずは酒蔵を巡ろう。
納豆はそれからだ!

茨城県は酒蔵が多く、関東一の日本酒県なのでまずは酒蔵を巡ることに。納豆もはずせないし……と上記のスポットを巡りました。

ここで重要となるポイントをひとつ。
“納豆を食べるのは、酒蔵を巡ってから!!”

微生物と共に作りあげる発酵食品の現場には、不用意に菌を持ち込まないのが鉄則。
特に納豆菌は繁殖力が高いので、酒蔵に納豆は厳禁!!
蔵人は細心の注意を払っていて、お酒の仕込み時期に入ると基本的に納豆は食べません。

万が一、納豆菌が混入してしまったら、麹がネバっとしたり、味がおかしくなったり……。取り返しのつかないことになります。
見学で蔵に入るなら、当日は納豆を食べないようにしましょう。

日本酒からクラフトビール、ウイスキーへ。
つないで輪になる「木内酒造」

まずは腹ごしらえもかねて、併設のレストランがある那珂市の「木内酒造」へ。

常陸鴻巣駅から徒歩3分ほどの場所にある本店には、「木内酒造」のお酒が買えるショップとお酒の飲み比べスペース、お蕎麦が食べられるレストラン「蔵+蕎麦 な嘉屋」があります。

「木内酒造」は日本酒に加えて、クラフトビールやクラフトジン、ウイスキーを幅広く展開する酒蔵です。「常陸野ネストビール」と聞いてピンとくる人も多いのではないでしょうか。

創業は1823年、清酒「菊盛」の酒蔵としてはじまります。昔はこの地に自社製造以外のお酒も販売する酒屋さんを構え、なんと郵便局も併設。街の暮らしを支えていたのだそうです。

蕎麦がきを食べ、日本酒を飲みながら、ゼネラルマネージャーの
萩谷さんにお話を伺います。
クラフトビールやウイスキーなどを幅広く展開しているのは、なぜなのでしょう?

「クラフトビールは、『日本酒を作らない夏に何かできないか?』との考えからはじめました。古くから日本酒をつくるのは冬から春にかけて。蔵人は季節労働でしたが、時代の移り変わりとともに蔵人として通年で勤める社員ができて、新たにクラフトビールをつくりはじめました。」(萩谷さん)

「ビール用の麦は自社の畑で麦を育てて作っているのですが、使用できる麦の品質が限られていることもあり、規格外の麦がたくさん生まれます。次にそれを原料にウイスキーを作ることにしまして、その搾りかすは…と、地元のものを余さず使えるように考えた結果、現在の形になりました。
いま、召し上がっていただいている蕎麦は、麦の収穫が終わったあとに裏作で栽培したものです。」と萩谷さん。

ランチのあと、特別に酒づくりの現場を見せていただけることになりました。

「日本酒をつくり終わったら、次はその酒粕で粕取り焼酎の準備、その合間に梅の季節がやってきて梅酒をつくります。どんどん新しいことがはじまるので、全力でついていっています。それもまた面白いところです。」

茨城県産の食材で循環するようにものづくりをする、その姿勢に心を掴まれます。

授かるように酒をつくる
ネクストステージに立つ「月の井酒造店」

大洗駅から徒歩20分ほど。古き良き旅館や商店を通ってたどり着いたのは、「月の井酒造店」です。
1865年に「松前屋」の称号で日本酒の酒蔵として創業。その名は中秋の名月の光を受けた波頭が金波、銀波に輝く美しさにあやかり、名づけられました。

杜氏・石川 達也さん(写真左)

8代目蔵元・坂本 直彦さん

迎えてくださったのは、8代目蔵元・坂本 直彦さん、杜氏・石川 達也さん。
幼い頃から後継ぎとして育てられ、先代の急逝で若くして「月の井酒造店」を背負う覚悟を決めた坂本 直彦さんと、埼玉や広島の酒蔵で蔵人・杜氏として活躍したのち、4年前に「月の井酒造店」の杜氏となった石川杜氏。

経歴の異なるお二人ですが、それぞれに大洗や蔵から「授かる酒」という考えを話してくださいました。

月の井酒造店」は漁師町の大洗で、この土地の食とともに時を重ね、150年以上もの間、この土地の酒を守り続けてきました。

蔵へ向かう途中のタンクには「潮風の酒蔵」の文字。大洗は、日本三大民謡「磯節」が生まれた場所でもあります。

特別に蔵を見せていただき、石川杜氏から就任してから新しくはじめたこと、蔵人のチームワーク、技を身につけることなど、たくさんお話を伺いました。

「私が杜氏になってから、磯節を土台にした酛摺り唄(※)を作りました。
波や磯、酒はさんずいへんと酉(鳥)からできているので“水鳥”といった言葉を入れているんですよ。

「酒造」の字からわかるように、酒は「作る」ではなく「造る」と表現します。お酒は授かりもので、つくり手がコントロールできるものではありません。

大洗や神様から授かる、畏怖の念が「造る」には込められているのだと思います。
蔵人も、こうした想いを歌いながら感じてくれれば。」と石川杜氏。

海とともにある酒のこと、酒づくりの志が随所に散りばめられています。

※酛摺り唄(もとすりうた)・・・酒づくりの酒母をつくる工程で歌う

ご厚意でしぼりたてをいただきました。喉を熱くするように通り過ぎ、飲みごたえがありながらも、キレがよく酒らしい味わいが体にじんと沁みます。

※通常、蔵見学・試飲はおこなっていません。

販売所では、「月の井 純米吟醸」などのレギュラーラインナップのほか、訪れるタイミングによっては、生原酒、にごり酒などの他ではあまり手に入らないお酒も販売しています。バウムクーヘンやドレッシングなど、お土産にぴったりなアイテムもあるので、ぜひチェックしてください。

茨城の恵が溶け込んだ酒を
酌み交わす喜びを考える「磯蔵酒造」

笠間市稲田に構える「磯蔵酒造」は地名に稲田の名がつく通り、山に囲まれ、古くから稲作が盛んな場所です。

蔵の入口には「日本酒文化長屋 磯蔵」とあり、ショップに加えて、酒蔵見学や茶寮でこの地に根付いている食とお酒の香りや味わいを感じながら、茨城・笠間の日本酒文化を体感できる場所になっています。

蔵を案内してくださったのは、倉主の磯 貴太さん。「日本酒文化長屋 磯蔵」を仕掛けたご本人です。磯さんが目指すのは、ライスィ(お米の味と香りがする)なお酒

磯さんは、「日本酒は知名度だったり、こだわりや価格で購入されたり、なかなか味で買う人は少ないんです。でも、マーケティングありきや、酒蔵のこだわりではなく、地元の米と水でつくった米の味と香りのする酒を、地元の人にうまいと言って日々呑んでもらえる本物の地酒を目指しています。」と話します。

笠間市稲田の周辺には採石場があり、「稲田みかげ石」と呼ばれる花崗岩がたくさん採掘されています。昔は山で石を切り出すための危険な肉体労働者が多かったことから、そうした人々を酒で癒し、そして支えられ酒蔵は続いてきたといいます。

米は茨城県産、水は石切山脈地下の伏流水を使用。
「私たちは、この土地のみかげ石に磨かれた水を” 石透水” と呼んでいます。汲み上げる場所は、酒蔵の真ん中。それは酒を造り始めた理由であり、蔵の命と言えます。

花崗岩を濾過フィルターのようにして生まれる石透水は、酒造りに不要な鉄分や不純物を石が濾過、除去してくれるのですが、それは私たちとは逆に石材業の人からは「鉄気(てっき)」と呼ばれ嫌がられるのですが ……。」と笑う磯さん。

本当のお酒がどんなものなのか。原点や目指すものについて、月の井酒造店の石川杜氏と話すこともあるという磯さん。
地元に根差す地酒について考え、お酌で注ぎ合う日本酒特有の文化など、お酒の役割を見つめ直し「地域の人々に慈しまれる“慈酒”として提案したい」といいます。

志を伺いながらいただいたお酒は、芯がありながらもやわらかさと個性をバランスよくもっていて、磯さんの話す「地元の人が飲む、いつもの晩酌で飲んで飽きのこない地酒」にも納得する味わいでした。

▲ショップでは笠間焼の酒器も買えます

日本酒の蔵を3つ巡って、後編ではいよいよ納豆メーカーへ!

後編:茨城=納豆はいつから? 小倉ヒラクの茨城県央発酵旅【後編】




【お知らせ】

この発酵旅を経て、小倉ヒラクとスタッフが選んだアイテムがお店に限定入荷します!!

<いばらき県央発酵フェア>
①店頭フェア:1/27(月)〜2/9(日)
②納豆づくりワークショップ:2/2(日)
⚫︎開催時間
1回目 12:30-14:00 ※満席となりました。
2回目 14:30-16:00 ※満席となりました。
⚫︎参加費(材料費込)
1名様あたり2000円

ワークショップの詳細&ご予約は、下記URLよりご覧ください。
https://ibarakinatto.peatix.com


ブログに戻る

▼あわせてお買物も▼

メルマガ「発酵友の会」

先行販売やお得なキャンペーン、会員限定のコンテンツやイベントのお知らせを受け取れます。

詳細はこちら

私たちのビジョン

発酵を通して自分の物語を生きる人へ。
発酵デパートメントの目指す先と会社概要はこちらから。

詳細はこちら