パリパリ、自然派の味。上澤さんとこの「らっきょうのたまり漬」がたまらないのだ!


▲画像:公式Webサイトより

料理は人柄が出るというけれど、上澤梅太郎商店の「らっきょうのたまり漬」はズバリその通りの味わい。会ったことがなくても食べただけで、上澤さんの人柄がなんとなくわかるのだ。満を辞して登場した「食卓の主役をはれる らっきょうのたまり漬」は、オーナー小倉ヒラクが惚れ込んだ味を再構築して無添加、無化調の自然派の仕上がり。パリパリ無限に止まらないその味について、上澤梅太郎商店の上澤佑基さんにお話を伺いました。


画像:公式Webサイトより

上澤梅太郎商店
上澤佑基さん

上澤家の長男。学生時代は文学を専攻。人類学を学んだほか、家業の都合上、自分で発酵食品を作ってみたりしていた。大手の漬物メーカーに就職し、中国の駐在員として塩漬けの魚など、現地の発酵食を食べる日々を過ごす。その後、上澤梅太郎商店に勤務。内に秘めている発酵愛は、発酵の変態こと小倉ヒラクに通ずるものがある。

長年続けてきた製法あってこそのパリパリ食感

ー月並みな表現ですが、上澤梅太郎商店の「らっきょうのたまり漬」は、たまらなく美味しいです。パリパリで歯ざわり良く風味豊か。私が今まで食べてきたらっきょうと何が違うんでしょうか。

どっちがいいというわけではないのですが、スーパーなどで流通しているらっきょうの漬物とは、大きく製法が違います。


▲らっきょうの頭とお尻がほんのり色づくのも、昔ながらの製法ならでは。グラデーションにほれぼれ!

スーパーなどで見かけるらっきょうの醤油漬けの多くは、らっきょうを塩漬けにした後、調味液の入った袋にらっきょうを入れて真空パックにして、加熱殺菌して作られています。桶で漬け込むというよりは、袋の中で味を染み込ませ、常温でも流通させやすい製法ですね。

ウチの「らっきょうのたまり漬」は、7月中旬頃に契約農家のらっきょうの収穫があって、すぐに塩漬けにして乳酸発酵させます。それを1年かけて販売する分量ずつ、毎回塩を洗って甘酢に漬け、最後にたまりに漬けて仕上げます。

ー違う料理と言っていいほど、工程が違うんですね。

そうなんです。甘酢に漬けるときも、2回、3回にわけて漬けこんでいます。たまりの漬け液は日光産のお米と大豆だけで作った味噌を絞って作り、そこにみりんや醤油などを加えています。

ーなるほど。らっきょうの歯ざわりや風味が違うわけです。

日光の観光地にあって、ある程度お客様がいらしていたので、効率などあまり気にせず、昔からずっと製法を変えずに作り続けることができました。取り残されてしまったといってもいいかもしれませんね。このような製法を続けている漬物店は全国でもかなり少ないと思います。今回はさらに新しい試みとして、保存料やうま味調味料などの添加物、また、液糖や酸味料なども使わずに作りました。

現代だからできるチャレンジ。無添加のたまり漬け

ーどうして、添加物、うま味調味料不使用にチャレンジされたんですか?

以前から僕の中で構想自体はありました。また、お客様からも「昔ながらの作り方なのに、なぜ無添加じゃないの?」という声もありました。そもそも、昔は保存料も流通の問題で必須でしたし、うま味調味料をいれるのは商品を美味しくするための企業努力として、むしろプラスに捉えられる感覚があったのです。

でも今は、昔に比べると野菜を洗浄する技術などは洗練されていて、流通も進化しています。野菜を発酵、熟成させれば旨味が十分に引き出せて、うま味調味料は使う必要はないだろうと考えました。でも、先に述べたとおり、弊社の漬物は「無殺菌」を前提にしているため、無添加のチャレンジは、つねに異常発酵のリスクとがつきまといます。

二の足を踏んでいたときに、ヒラクさんから発酵デパートメントでも無添加を作ってほしいという声があると聞きました。それなら、一緒にやりましょうとすぐに話が進みましたね。

ー実際に作ってみていかがでしたか?

仕上がりの面でいうと香りも味わいもナチュラルで、現代に求められるものにマッチしている気がします。既存品の良さをそのままに、風味はふんわり優しく仕上がっていて。

ー大成功!ですね。何度か試行錯誤されたのでしょうか?

当初から目指していた味わいに近い出来ですね。何度か調整はしたものの、正直にいうと1回目の試作から「これはイケる!」と確信していました。

お酢にこだわり、自然の旨さを引き出す

ー既存品のレシピから変更した部分はどういったところですか?

一番の違いは、お酢です。通常、漬物に使用されるお酢はコストを第一に選ばれますが、今回は栃木県宇都宮市にある中野嘉兵衛商店さんのもろみ酢を使用しています。杉の大樽で長期熟成した米の旨味たっぷりのお酢です。そこにりんご酢も加えて、フルーティさを出しています。

ーほぉ〜、りんご酢まで。


▲契約農家の畑でらっきょうの収穫を手伝う上澤さん

採りたてのらっきょうを丸かじりしたことってありますか?採りたてを畑でかじってみると、爽やかで青リンゴみたいなフルーティさをもっています。その自然なニュアンスを再現してお届けしたいと考えました。

ーパリパリ食感にフルーティな甘酸っぱさ。たまりの存在感もあって、今回乾杯セットにしたワインをはじめお酒にぴったりですね。

発酵デパートメントでヒラクさんと「どういうペアリングがいいだろう?」と打ち合わせしていたとき、国産のワインにベストマッチなことに驚きました。ウチのたまり漬の新しい地平、みたいな感じがしました。

ご飯と味噌汁のような普段の食卓の箸休めも、もちろんおすすめです。食卓の構成の中でも味わいが重ならず、いいアクセントになります。あと、玉ねぎ感もピクルス感もあるので、ポテトサラダ、タルタルソースなどの「日本的洋食」ともぴったりですね。

日本の食卓を豊かにし続ける上澤梅太郎商店


▲上澤さんは、毎日Twitterに朝食を投稿している

ーご飯とお味噌汁というと、上澤さんの朝食なんかがまさにそうですよね。いつもTwitterを見ています。

ありがとうございます。和食の素晴らしさを広めていけたら、と思っています。上澤梅太郎商店は創業400年以上。江戸時代には日光東照宮の年貢米を預かる立場にあり、その後は味噌・醤油の醸造卸業を営んでいました。日本の食卓に欠かせない、米、味噌、醤油に関わってきたわけですから。

ー代々、日本の食卓を守ってきたのですね。すごい歴史がありそうですが、たまり漬をはじめたのはいつ頃なんですか?

一般用に販売したのは戦後です。戦前は味噌・醤油の製造卸業として、宇都宮の陸軍基地や足尾銅山、また日光・鬼怒川の温泉街に向けてフル稼働していました。当時、たまり漬は、桶の底に残った味噌や醤油で野菜を漬けて、細々と作っていたようです。出来上がったたまり漬は、蔵人のまかないや大口のお客さんに向けたノベルティに使用していました。

戦後の混乱期、味噌や醤油が造れない、造っても売れないという時代がありました。当時の当主だった曽祖父が「今は大変な時代だが、日光・鬼怒川は観光地として必ず復興する。一流の観光地には、一流の名産品が必要。自分はそういうものを作りたい」という志のもと、ほとんど自家消費していた「たまり漬」を商品としてアップデートしたのがはじまりです。

そうして地域に少しずつ広めてきた「たまり漬」ですので、「たまり漬」という概念自体、ウチが作った自負があります。実際に日光市はじめ栃木県全域、とくに今市(いまいち)のあたりにはたまり漬が根付いています。

ー昔から現代へ。400年の歴史を背負う中で、今回のチャレンジは大きな一歩ですね。

今後も製法の見直しを含めて、色々とアップデートしていこうと考えています。これからが楽しみですね。


現代のニーズにまじめすぎるくらいに向き合い、歩みを進める上澤さん。パリパリっとらっきょうを食べると、まっすぐな美味しさが心地よくて、こんなのが作れるなんて……と彼の人柄に想いを馳せるのでありました。

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