【愛知県】三河みりんの格調高き甘み-日本各地の手前みそvol.04

シリーズ『日本各地の手前みそでは、全国のユニークな発酵食品や各地で起きている新しい醸造文化のムーブメントを紹介します。vol.4となる今回は愛知県のみりんのお話。

▲本格みりんのもろみ。米と水を組み合わせて甘味をつくる

愛知県南部、碧南地方には和食調味料の定番であるみりん蔵が集まっています。身近なようでいてよく知らない人も多いみりんのディテールを、地域の歴史を紐解きながら掘り下げてみましょう。

焼酎で醸した甘酒

とりあえず甘くなるよね…程度の認識しか持たれていなかったりするみりん。乱暴に要約すると、水のかわりに焼酎を麹と混ぜて醸した甘酒。米麹に焼酎ともち米を混ぜて数ヶ月間熟成させると、麹の糖化作用(米のでんぷんからブドウ糖を分解する酵素作用)が強力に働き、最終的にメロンもビックリの甘さのリキュールができます。

そう。みりんは調味料というよりは酒なのですね。上記の本格みりんと呼ばれる江戸時代から続く伝統製法では、アルコール度数12〜13%くらい。ロックやソーダ割りにすると、なかなか美味しく飲めます。

海運と醸造業のつながり

愛知県南部の海沿い

酒で甘酒を仕込むという、江戸時代にはなかなかの贅沢品であったみりん。なぜ愛知南部で発達したか、理由は海運ルートにあります。明治に至るまで、日本の大量輸送は陸路ではなく海路に頼っていました(海流に乗ればモーターがいらないので)。

江戸時代中期以降の最重要ルートは、大阪の堺から江戸のルート。その二箇所の中継点が愛知県南部海沿い知多・碧南(と静岡県伊豆)だったわけです。中世までの日本では、酒や醤油などの発酵食品は付加価値の高い貿易品。関西の堺や灘からの商品がプレミアムブランドとすると、ミドルクラスとして重宝されたのが愛知の発酵食品。知多・碧南には酒や調味料の蔵が林立しました。

そのなかで、日本酒をつくる時に副産物として大量に出る酒粕を再発酵して蒸留する「粕取り焼酎」が発明され、それをさらに加工することで生まれたのがみりん(とあとミツカンのお酢)なんですね。海運の要所では醸造業が発達し、大量生産の副産物の再加工がさらなる発酵の技術革新を呼び込むわけです。

みりん「風」と本格みりん

江戸時代からの伝統を持つみりんの世界。実は戦後になってややこしい状況に。スーパーで売っているみりんのほとんどは、実はみりんをシミュレートしたものなのです。

米と麹をほんの少しだけ使って糖類や醸造アルコールをブレンドして使ったみりんがまず半分。そして残り半分が「みりん風調味料」と言って、みりんっぽい味に仕上げた糖類や添加物の合成物。米と麹と水だけでつくった本格みりんは棚に一種類あればいいほう。

瓶の裏の原材料欄をチェックして、多少値段は張りますが本格みりんをゲットしてください。余韻の長い、格調高い甘味を食卓にプラスすることができますよ。

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