このコラムでは、料理ユニット・南風食堂主宰の三原寛子さんがさまざまな発酵物たちと戯れていきます。第一回のテーマは「腐乳」。前編ではその出会いや魅力について語っていただきましたが、今回の後編は実践編。前編はこちらから。
はたして三原さんは美味しい腐乳を完成させることができたのか。そして、そのレシピとは。
腐乳ができるまで
まず、豆腐はしっかりと水切りをして、3センチ角ほどに切る。
そして、箱に藁をしき、並べてまた藁をかけ、風通しの良いところに置く。
3日くらいから、嗅いだことがない不穏な香りがし始め、黄色いカビが全体を覆い始める。4日~1週間くらいで完成。ほっ。赤いカビや青いカビは出なかった。
塩に花椒、陳皮、胡椒を少し混ぜたスパイス塩をつくっておく。黄カビ豆腐をアルコール度が高い白酒につけて、そのあとスパイス塩を全体にまぶし、消毒した瓶に詰め、一両日置き、そのあと酒や油を加える。
初回は、紅麹粉、米麹、日本酒を入れたバージョン、貴州省の唐辛子をまぶして白酒に浸したバージョン、紹興酒バージョン、米麹とシン・ツチダ(発酵デパートメントでも販売しているおいしい日本酒)バージョン、オイル漬けの5種を作成。1週間ほど漬ければ食べ始められる。
できたものを一口かじってみてびっくり、なんて美味しいんだろう。正直、匂いが加速していた段階で、傷んで失敗してしまっていて、ひどい味になってしまうのではないかと心配していた。
だがしかし、本当においしい。フルーティーな複雑な香りとチーズのようなねっとりとしたコク、今まで食べてきた腐乳にも負けない、衝撃のおいしさだった。唐辛子を漬けたものはお酒のつまみにぴったりだし、シン・ツチダバージョンの味の奥行きは果てしない。食べたあとも、お腹は壊さなかった。大成功である。
できあがった腐乳をさらに美味しく食べよう!
そのままつまんでもおいしいが、料理にも使ってみる。おいしかった一品をご紹介する。
腐乳はうまみが強いので、クレソン、春菊、セリ、ルッコラのような香りが高い野菜と合う気がしたので、アサリとクレソンと合わせてみた。
まずは、クレソンと香菜をざくぎり、青ねぎを小口に切る。腐乳を酒で溶き、しろたまりを加えたタレをつくっておく。フライパンに油をしき、みじんぎりにした大蒜と唐辛子を炒め、アサリを投入。軽く炒めたあと、さきほどのタレを入れて、蓋をして蒸し煮にする。9割がたアサリが口を開いたらクレソンと香菜を入れてさっと合わせたら火を止めて器に盛り、ねぎをパラリ。
火が入った腐乳はまろやかクリーミーなのだけど、重たくない、奥底に洋梨のようなフルーティーな香りもあり、あさりの出汁も足されて、ああ、箸が止まらない。ちょっとはしたないが、残った汁をごはんにかけてリゾット風にしたのも、とてもおいしかったことをご報告しておく。
タイで食べた紅腐乳とタマリンドの汁麺「イエンターフォー」を梅干しと紅麹腐乳でつくってみるのもおいしそう。腐乳に衣をつけて、揚げる腐乳の唐揚げも酒肴に良いのではないだろうか。中国料理の研究家のジョアン先生のおうちで、豚肉に腐乳とスパイスをあわせたものを塗り、味をなじませてからグリルしたものをいただいたのも激美味だった。
中国では黄色い「アスペルギルスカビ」ではなく、白いもけもけした「クモノスカビ」をつける。クモノスカビのモトのような、ふりかけるとクモノスカビが生える粉末も売っているらしいので、中国旅行した際には是非買って帰って、クモノスカビバージョンも試してみたい。