#05 発酵駆け込み寺? 良いお店の条件とは

発酵デパートメントオーナー小倉ヒラクが、各地の旅で出会った発酵文化や、お店の運営で考えたことをお届けします。長文だったり一言だったり、日記形式で気軽に書いてます。

前回>>#03 コロナ禍さなかでの出発

みなさん、発酵してますか?
インドはじめ出張続きで更新滞っておりました。
発酵デパートメントをオープンしたばかりの時につけていた日記から、当時のことを思い出すシリーズの第三回です。

発酵デパートメントは2020年4月、新型コロナウイルスによる緊急事態と同時に開店しました。

得体のしれない謎のウイルス、人に近寄っただけで感染してしまうのでは…? 電車に乗るのもお店に入るのも、ましてや飲食店に行くなんてキケン!と不確かな情報が錯綜する緊急事態の社会のなか、お店を開け続けていることが果たして正解なのだろうか?と思い悩んでいました。

オープン当時の発酵デパートメントは、徒歩or自転車で通える近所のスタッフ二人と僕で毎日せーの!でお店を開け、夕方にせーの!で退勤するという、シフトも何もない超シンプル営業スタイル。

僕も電車に乗るのを避け、自宅のある山梨の山の中の集落とお店を車で往復する日々。どこのお店も施設もほとんど閉まっているので、まるで陸の孤島同士を行き来しているような感覚でした。

お客さんも来ないし、しばらくお店閉めちゃおうかな…と思っていたら、電話が鳴りました。

「ヒラク君、お店元気にやってる?実は予定していたデパートの催事がなくなっちゃってさ…」

仲良くしている北陸の醸造家からの相談コールでした。

「このままだと商品廃棄しなくちゃいけないから、ヒラク君のところでなんとかならないかな?」

とお困りのよう。「それは大変!じゃあ発酵デパートメントで買い取りますよ」と後先考えずに商品を買い取ってしまいました。

それから毎日のように、各地の醸造家から連絡が来るように。

「道の駅が閉まっちゃたから、地元向けの商品の行き場がない」

「飲食店向けの卸商品どうにかならない?」

気づいたら、続々と全国各地の醸造メーカーの限定商品が発酵デパートメントに集まる状況に。
例えば。定番の森奈良漬店のセロリの奈良漬けはこの頃に相談があって「ぜひやりましょう!」と取り扱い始めたもの。今でも森さんは当時のご縁を大事にして発酵デパートメントのみ置いてあるめちゃ最高の商品です。

実はオープン当初は比較的仕入れやすい、量販店やデパートで置いてあるようなレギュラー商品の取り扱いがメインでした。
それがオープン三ヶ月くらい経った頃には、ここでしか手に入らないような個性的な商品が並ぶ売り場ができあがっていきました。

ご近所さんの口コミで少しずつ増えてきた客足のなかで、食通のお客さんが「あら、この店面白いもの置いてあるわね」と気づきます。すると別の食通のお客さんに口コミが広がっていく…というサイクルができあがっていく。

いつの間にか、発酵デパートメントはコロナ禍における「発酵駆け込み寺」になっていたわけです。

コロナ禍が落ちついた後も「発酵デパートメントに持っていけばなんとかなるはず」と、マニアックなもの、実験的なものがどんどん持ち込まれるように。見たことない商品を前に、

「これいったいどうやって使えばいいんですか?」

と、とあるメーカーに連絡したところ、

「それを一緒に考えてほしいんだよね」

との返事。どうすりゃいいんだーい!と心の中で叫びつつ、発酵デパートメントがいち食材店にとどまらず、「醸造家のパートナー」として(ちょっとだけ)認められたのかな?と嬉しかった記憶があります。

そんな「どうすりゃいいんだーい!」を延々と続けていった結果、発酵デパートメントには百貨店にも自然食品にも、なんなら県のアンテナショップにも似ていない唯一すぎる売り場ができていったのでした。

そこで僕が気づいたシンプルな事実があります。良いお店とは

・他では買えない商品が
・心を動かすような素敵な伝え方で売っていて
・行く度に変化がある

この三つが備わった場所。こういうお店が近所にあったら、定期的に通ってしまう。コロナ禍のどん底の状態のなか、僕たちは素敵なお店の3条件を一つずつ体得していったのでした。

次回に続く。

◆おすすめ商品◆

本文でも紹介した森奈良漬店。
奈良漬け入門にぴったりのウリとキュウリの刻みをどうぞ。

東大寺の山門すぐ前にある森奈良漬店。
平安時代から存在していた奈良漬のルーツを守る、超シンプルな伝統製法を貫いています。

具体的にいうとだな。
熟成させた酒粕と塩だけで、食材を何度も漬け変えて2年〜5年ほどかけて漬け込んでいきます。一般的に流通している奈良漬けは、味を整えるためにうま味や甘味を加えているのですが、森さんの奈良漬けは一切ナシ。発酵の醸し出すうま味甘味のみです。

その結果生まれるのが、クセのなく品のある味わい。ふだん酒粕漬けが苦手な人でも難なく食べられてしまう、ビギナーにこそオススメの逸品です。

奈良に遊びに行った時は、森さんのお店を訪ねてみてください。鹿もいっぱいいるよ。

 

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